安倍政権は、年金支給開始年齢を「65歳」から「68歳」に引き上げるための地ならしを進めている。さらにその先には「70歳」への引き上げも検討されている。そうした年金改悪に、国民はどう対抗すべきなのか。
本誌・週刊ポスト(8月17・24日号)で報じた「年金収入211万円の壁」は年金のスペシャリストである社会保険労務士の間でも反響を呼んだ。ある社会保険労務士が打ち明ける。
「記事は、年金収入が211万円を少しでも上回るかどうかで老後の明暗がくっきり分かれるという内容でした。『高齢者こそ年金を減らそう』というポストさんの提言に“その手があったのか”と社労士仲間の間で話題になりました」
「211万円の壁」のカラクリを改めて紹介する。最大のポイントは「住民税」の有無である。
年金暮らしの場合、年金収入の額で、住民税が課税されるか、課税されないか(非課税)が決まる。65歳以上で扶養家族が妻1人の場合、年金収入が年211万円以下(月額約17万6000円以下)ならば住民税が非課税となり、それより収入が多ければ課税される。
税理士でファイナンシャルプランナーの犬山忠宏氏が指摘する。
「年金収入が211万円以下の非課税世帯になると住民税がゼロになるだけでなく、様々な面で金銭的な恩恵を受けられます。中でも、社会保険料の負担が減ることが手取り収入に大きく影響します」
年金収入が211万円のAさんと、年金収入が212万円のBさん(ともに妻と2人暮らし)を比べると、違いは歴然だ。
Aさんの社会保険料は年間18万7000円で、これを差し引いた手取り年収は192万3000円。
一方、Bさんの社会保険料は年間28万3200円で、手取り年収は183万6800円。1万円だけ年金を多くもらうBさんのほうが、手取り年収が約10万円も少なくなるのだ。