田代尚機のチャイナ・リサーチ

米国債利回りの上昇続く、中国の売りが最大のリスク要因に

 FRBは金融政策の正常化を進めており、国債保有額の縮小を始めている。発行残高が増える中、第3位の保有主体が売りに回っている以上、トップである海外機関の買いに期待がかかるところだ。

 直近データとなる7月末の残高について、その内訳をみると、中国が最大で1兆1710億ドル、19%を占める。第2位は日本で1兆355億ドル(17%)、第3位はアイルランドで3002億ドル(5%)となっている。

 こうしてみると、中国、日本の保有比率が圧倒的に大きい。日本の残高は6月末と比べ51億ドル増えているが、中国は77億ドル減っている。この先も中国が残高を減らすようだと需給バランスは崩れ、金利上昇に歯止めがかからなくなってしまう。

 トランプ政権は7月6日、340億ドル相当の中国からの輸入製品に対して25%の追加関税をかける措置(第1弾)を発動し、8月23日には160億ドル相当に対して25%の追加関税措置(第2弾)を発動した。そして9月24日には2000億ドル相当に対して10%の追加関税措置(第3弾)を発動している。

 足元の米国債10年の利回り上昇は、中国が米国債投資に消極的となったことが要因である可能性が指摘されている。米国債を売却して、預金、不動産ローンといったほかのドル資産や、ユーロ、円などの他通貨建ての資産、あるいは新興国の国債などを買っている可能性もあるだろう。

 米中関係が密接なのは、サプライチェーン、バリューチェーンだけではない。トランプ政権は今更、その関係を見直そうとしているが、それは簡単ではない。中国を敵に回せば、アメリカの金融システムは大きなリスクにさらされる。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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