企業概要
国内5位の大手医薬品メーカー。がん領域と神経領域を成長重点分野に位置付け研究開発に注力しています。
1990年代に認知症薬「アリセプト」の世界展開に成功したことで、世界でもトップ30入りを果たしたグローバル企業です。
足元19/3期の業績動向は好調。特許切れを迎えた薬があった米国以外の他の地域は全て好調に推移し、グローバル4品目の伸長が寄与しました。利益面では国内の薬価改定やアルツハイマー病領域を中心とした研究開発費の増加による費用増も増収効果で吸収し、大幅増益で着地。通期も引き続き増収増益の見通しとなっています。
今年3月には抗がん剤「レンビマ」で米メルク社と戦略的提携を結び、さっそく前期には契約一時金320億円が計上されています。提携で得られる収入は最大で計58億ドルにおよぶ大型提携です。同社はメルク社の営業基盤を活用し、特許切れまでのピーク売上で現在の10倍近い規模となる5000億円をめざすとしています。主力薬の伸びやメルク社との提携で得られた収益は、アルツハイマー領域に投下される模様です。
注目ポイント
同社株は足元の業績というより、アルツハイマー治療薬への期待感に影響を受けます。
かつて「アリセプト」で最大3200億円を売上げ、認知症治療薬領域を一世風靡した同社が再び同領域で一時代を築こうとしています。同社株はアルツハイマー治療薬の開発の進捗を反映しており、2015年にアルツハイマー新薬「アデュカヌマブ」の第一相試験の成功が発表された際も、同社株は3か月ほどで2倍に急騰。
それが今年に入って同剤の第2相試験12か月間解析での目標未達が発表されると約15%も下落。はたまた7月には18か月解析結果が良好だったことが伝わると急騰するという反応を見せています。
注目のアルツハイマー治療薬ですが、再び同社を同領域のファーストカンパニーにする可能性を高めています。
同社では、2014年からバイオジェンとアルツハイマー治療薬(AD治療薬)で共同開発を進めてきました。現在3つの新薬開発を進めていますが、その内最も上市に近い「アデュカヌマブ」に続き、残り2つの新薬「Elenbecestat」と「BAN2401」についても今夏有効な結果が確認されたことで、いずれも開発成功の可能性が高まってきました。
アルツハイマー領域では多くのメガファーマが開発を失敗しているだけに、良好な結果が確認できている同社は目下アルツハイマー治療薬領域で最も競争力のある製薬会社だと言えます。
もっとも研究開発には多額の資金を要しますが、主力グローバル4品目の好調によるキャッシュ創出力と、がん領域でのメルク社との提携で得る一時金収入が回される見込みであることなどから、財務的な負担もキャッシュフローでカバーすることができると見ています。
足元の業績ではメルク社とがん領域での戦略提携による一時金計上で利益が急拡大したことなどが評価され、株価も10%の上昇となりましたが、それ以上にアルツハイマー薬領域が株価のカタリストとなっています。なにせ「アデュカヌマブ」だけでも1兆円超えの売上が期待できるとされる領域であることから、ポジティブサプライズは大きく株価に影響します。
それだけに同社株には「持たざるリスク」も意識されやすくなってきていると思われ、調整時には購入を検討したいと思います。
【PROFILE】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。『日本人が知らなかった海外投資 米国株』他、著書多数。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。