政府の“年金改悪”は着々と進んでいる。「人生100年時代、年金をあてにしないで生涯働け」と喧伝しながら、定年後に働いて稼げば年金を減らす仕組みをどんどん拡大しているのだ。
厚生労働省には、早ければ今年60歳を迎える世代から順番に年金支給開始年齢を66歳、67歳、68歳へと1年ごとに引き上げていくシミュレーションがある。ちょうどこれから定年後の人生プランを考えようという世代が、65歳になっても年金をもらえない「年金空白」の危機に直撃される可能性がある。
標準的なサラリーマン(1人分の年金月額約16万円)の場合、支給開始年齢が1歳引き上げられるごとに生涯年金受給額がざっと200万円減る。68歳支給になれば600万円、70歳支給なら1000万円もの年金カットと同じだ。
パート主婦の特典廃止
今回の年金改革では、「妻の年金」も標的になる。
サラリーマンの夫の扶養家族となっている専業主婦(3号被保険者)は自分では年金保険料を払わずに国民年金を受給できるが、パートなど週20時間以上の勤務で月収が8.8万円(年間約106万円)を超えると厚生年金に加入し、保険料を自分で負担しなければならない。そうなると手取りが減るため、勤務時間を減らして収入を抑えるケースが多い。いわゆる「106万円の壁」だ。
だが、厚労省はこのパート主婦層からさらに保険料を取り立てるため、厚生年金に強制加入させる収入要件を月収6.8万円(年約82万円)に引き下げる方針だ。法定最低賃金(全国平均時給874円)でも月80時間以上働けばこの基準を超えてしまう。サラリーマンの妻の“年金保険料免除”の特典を事実上なくそうというのである。