学生が就職活動をするにあたって、いわゆる「コミュニケーション能力の高さ」が重要視されるといわれるが、なぜなのか。もちろん「人物本位」で選考するケースや、「地頭の良さ」や「情報処理能力の高さ」が評価されるケースもあるが、「コミュニケーション能力の高い学生が最強ではないか」と語るのは、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。中川氏がそう考えるに至った理由についてつづる。
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イベントで知り合った女性が週に1回バーテンダーを務める店に行った時に出会ったのが都内の私立大学に通う・A君です。喋っているうちに、大学の学園祭の企画を担当しているということがわかり、「中川さん、何かやっていただけませんか?」と言ってきました。私は学生さんからの申し出は基本受けることにしているので「どうぞよろしく」と快諾したのですが、この段階で自分が学生だった頃と比べ彼の優秀さに驚くばかりでした。
一応私も「ネットでやり取りされるコミュニケーションの事情に詳しい専門家(笑)」という立場で仕事しているのですが、世間的な知名度はほとんどありません。あくまでもニッチ業界の専門家なわけで、それなのに自分を知っていてくれ、著書まで読んでくれていた。
かくして学園祭に向け、打ち合わせをしたのですが、場所は東京・渋谷の行きつけの飲み屋。そのとき、同店の社長も店にいて、一緒に飲みながら話す機会があったのですが、社長はよく、気に入った人間を競馬場の貴賓席に招待してくれます。滅多にそういった人間は出てこないものですが、初対面の彼にも「おう、今度の日曜日、競馬来るか? ただし学生だから賭けちゃだめだぞ。でも、馬を見るだけでも楽しいぞぉ~」と言われ、「行きます!」とすぐに笑顔で返答。
その後、元々飲む相手だった編集者と大学講師もやってきましたが、彼らともすぐに打ち解け、実に楽しい会になりました。途中、A君は大学新聞の研究をやっていることや、著名な人事関連の専門家とも知り合いであることや、著名な活動家からイベントを巡り恫喝されたことなども語ります。
いつしか我々の席の話題の中心はA君に移っていき、編集者と大学講師は帰りの電車でいかにA君が優秀かを語り続けたそうです。