「生涯現役社会」に名を借りた“年金支給先延ばし時代”が近づいている。安倍政権が進めようとしている年金大改悪で、年金の支給開始年齢が現行の65歳から68歳、さらに70歳以上へと引き上げられようとしており、受給者から年金を減らす一方で、保険料負担を増していく仕掛けがある。
迫り来る厳しい時代を生き抜く対策を立てるには、まず自分が置かれている現状を冷静に分析する必要がある。「大損する」のはどんな人なのか、年金制度を駆使すれば「救われる」のは誰なのか。その分岐点をわかりやすく整理した。
例えば、定年後の再雇用は「フルタイムで働くほうが割に合わない」ようだ。2年前に60歳で退職を迎え、週3日勤務で月給20万円のAさんと、同じく週5日フルタイムで働き月給30万円を手にするBさんで比べてみよう。
2人は62歳になる今年から毎月8万円の「部分年金」(報酬比例部分)を受け取れる。
だが現在の在職老齢年金制度では、65歳未満は「給料+年金」の合計が28万円を超えると超過分の半額を年金支給額から減額される。この場合、年金と給与の合計収入が28万円のAさんはカットされないが、38万円のBさんは5万円の年金カットとなる。
しかも給料から天引きされる税金・保険料を加味すると、週3日の“ゆとり勤務”のAさんの手取りがトータル約24万円なのに対し、Bさんは週5日フルタイムで働いても約27万円に過ぎない。その差額はわずか3万円。働き者のBさんのほうが、年金カット+社会保険料増の二重苦に襲われる“逆転”現象が起こる。
ただし年金が満額支給となる65歳以降は、在職老齢年金の年金減額基準が「給料+年金」の合計で47万円まで拡大する。
AさんとBさんの年金支給額は65歳になると月約14万円にアップするため、月給33万円までなら年金カットにはならない。そうなると、Bさんのようなフルタイム勤務に旨味がある。年金の面から見れば、時期によって働くことが“損”になることもあるのだ。
※週刊ポスト2018年10月26日号