「生涯現役であれば、70才を超えても受給開始年齢を選択可能にしていく。そういう仕組みづくりを、3年で断行したい」──安倍晋三首相が9月中旬の総裁選の討論会でそう発言したことが、大きな波紋を広げている。
現在の年金制度は、原則、「65才」から年金を受け取り始めて、死ぬまで受け取れる。一部の世代だけは「60~64才」でも部分的に年金を受け取れるが、あと数年でそんな特例制度も終わる。
しかし、一律65才での受給開始になると、いろいろ困ったことが起きる。
1つは、60才で定年退職した会社員Aさんのケース。60~64才では継続雇用で会社に残って働けるが、収入はかなり減ってしまう。「無年金」の60~64才の間は、妻(専業主婦)と子供(大学生)の生活費・学費がまかなえないという。
もう1つは、70才までバリバリ働きたいBさんのケース。現制度には「在職老齢年金」というルールがあって、Bさんのように現役世代と同程度の収入を稼ぐと、年金額が大幅に減らされてしまう。
そんな状況を解決するために活用したいのが、受給を開始する時期を60~70才の間で自由に選ぶことができる年金の「繰り上げ、繰り下げ」システムだ。「年金博士」こと、ブレインコンサルティングオフィスの北村庄吾さんが解説する。