「生涯現役社会」に名を借りた“年金支給先延ばし時代”が近づいている。安倍政権が進めようとしている年金大改悪で、年金の支給開始年齢が現行の65歳から68歳、さらに70歳以上へと引き上げられようとしており、受給者から年金を減らす一方で、保険料負担を増していく仕掛けがある。
迫り来る厳しい時代を生き抜く対策を立てるには、まず自分が置かれている現状を冷静に分析する必要がある。「大損する」のはどんな人なのか、年金制度を駆使すれば「救われる」のは誰なのか。その分岐点をわかりやすく整理した。
例えば、一般的な生涯賃金は中卒、高卒、大卒の順に増加する。ただし厚生年金は、長く働いた人に“ご褒美”がある。「長期加入者特例」だ。
男性の場合は、厚生年金に44年(528か月)以上加入した人が対象となる。「部分年金」(厚生年金の報酬比例部分)に加えて、本来は65歳になるまで支給されない基礎年金部分も特例として65歳前にもらえる。“得する年金”が月額6万円程度増額されるのだ。
中卒入社の場合は60歳定年まで働けば要件を満たせる。高卒の人の場合、定年まで勤めた後、62~63歳まで雇用継続すれば、「44年加入」の条件をクリアできるが、大卒サラリーマン(22歳以降に入社)は、会社に雇用延長が義務付けられている65歳まで働いても厚生年金加入期間は44年に届かない。
この特例は基準に1日でも足りなければ年金増額はゼロで、大卒社員は中卒や高卒社員なら手に入る「月額6万円アップ」の特例が丸々もらえないのである。
※週刊ポスト2018年10月26日号