たとえば、2014年に100万円で投資した株が60万円に値下がりしている状態で課税口座に移管すると、60万円が取得価格とみなされる。このため、2019年に100万円に回復して売却できた場合、40万円が利益とみなされ課税されてしまうのだ。投資家が投じた金額は100万円なのだから利益はゼロであり、ここに課税されるのは痛い。
逆に利益が出ている状態で移管した場合はどうか。100万円投資して、120万円に値上がりした株を課税口座に移管した場合、120万円が取得価格とみなされる。このため、年末時の利益である20万円には課税されないが、2019年に150万円で売却すれば30万円が課税対象となる。110万円に値下がりした場合は、差額の10万円が損失となり、他の利益と損益通算することは可能だ。
まとめると、利益が出ている場合は、継続保有したいならロールオーバー、2019年に値下がりの不安があるなら年内に売却するのがシンプルだ。ただ、迷いがあるなら課税口座で保有を続けることも検討の価値はありそう。
含み損状態の場合は、ロールオーバーして回復を待つ手もあるが、これを機に潔く損切りするのも手だ。ロールオーバーしなければ、2019年は120万円の新規投資枠を確保できるので、心新たに有望な投資を検討できるからだ。NISA口座で損失を出すと損益通算の対象にならないため塩漬けがちだが、これを機にポートフォリオを見直すも検討したい。
いずれにせよ何も手続きしないと自動的に特定口座に移管されるので、ロールオーバーを希望する場合は早めに検討して証券会社に手続きをする必要がある。手続きの期限は証券会社によって異なるが、たとえば、SBI証券では12月7日までに書類を返送する必要があり、年末までは待ってくれないので注意したい。
文■森田悦子(ファイナンシャル・プランナー/ライター)