つまり、圧倒的に「繰り下げ」を選択した人が少ないのだ。安倍晋三首相は「生涯現役であれば、70才を超えても受給開始年齢を選択可能にしていく」と発言するなど、「75才まで繰り下げられるようにする」と血気盛んなのだが、一体、どれだけの人が利用するのだろうか。「年金博士」こと、ブレインコンサルティングオフィスの北村庄吾さんが語る。
「国民としては、これから確実に目減りしていく年金を、受け取らずにじっと待とうとは、なかなか思えません。年金制度の破綻だってありえない話ではないのです。であれば、“いつもらえなくなるかわからないから、もらえるうちに、早めにもらっておかないと損しそうだ”というのが、年金の制度不安を知っている人の共通認識でしょう。だから、『繰り上げ』で受給したい人の方が圧倒的に多い」
もう1つ、繰り上げ・繰り下げの判断基準になるのが、「健康寿命」という考え方だ。健康寿命とは、医療や介護を必要とせずに、1人でやりたいことがやれる体力を持てる寿命のことを指す。
「要介護や寝たきりになってから、たくさんお金を受け取っても意味がないと考える人は多い。旅行や運動など、趣味に思いっきり打ち込める間に、自由にできるお金があった方が、人生が有意義だとは思いませんか? そう考える人が多いので、『繰り上げ』を選ぶ人の割合が高いんです」(北村さん)
日本人の健康寿命は、男性が72.14才、女性が74.79才。65才で年金を受給開始してからどちらも10年以内であることを考えると、心も体も若い時間は、意外と短いのかもしれない。
※女性セブン2018年11月1日号