2019年1月から順次施行される相続の新ルールは、円満な相続の助けとなる一方、新たな火種も招きかねない。たとえば遺産分割に関して、新制度には利点も注意点がある。
今回のルール改正で、結婚して20年以上の夫婦の場合、生前に贈与するか、遺贈(死亡時に贈与)した家は、遺産分割の対象から除外されることになった。妻に大きな資産(自宅)を渡した上で、残った現金を子と分けるため、妻にゆとりを持った生活を保障できる。
ただ、この際は家族間での話し合いが欠かせないという。夢相続代表で相続コーディネーターの曽根恵子氏が解説する。
「相続税の配偶者控除があるため一次相続時に節税メリットはありますが、妻から子への二次相続が起きた場合、一次と二次を合わせた税負担額は、新たなルールを用いた方が大きくなる可能性もある」
妻に住む場所を残すなら、新たに認められるようになる「配偶者居住権」を使う手もある。そうすれば子に自宅の所有権を相続させた上で、居住権をもつ妻が自宅に住み続けられるようになる。
贈与して遺産分割の対象から外したほうが、権利関係はシンプルで、かつ妻に手厚いが二次相続の負担増リスクを家族全員が納得しているかは、生前に確認しておいたほうがいいだろう。
※週刊ポスト2018年11月2日号