数年前までの一つの説は「博報堂の給料は電通の7掛け」(博報堂社員)といった声もありましたが、その差は確実に縮まっていると前出の電通社員は述べます。一方の博報堂にしても、最近は人材流出が多いそうです。
「やはり自分自身が事業会社のメンバーとして、自社の製品を売りたいと考えるか、規模は小さくても、経営により近い場所で仕事をしたいと考える人が少なくないようです。あと、人材の流出についても『仕方がない』と考える面もあります。恐らく中川さんの頃(2001年)は、引き留められたりもしたでしょうが、最近は『あなたの決めたことだから』と特に慰留はあまりしなくなっています」(博報堂40代社員)
とはいっても、人材の流動化というものは、新たなる考え方や発想を生むものです。先日会った某出版社の広告担当はIT企業出身だと言いました。彼は、自社メディアにかかわるアドネットワークの収益最大化をミッションとしていますが、基本的にはデータの分析をし、適切な業者選定をすることなどにより収益最大化をはかっているようです。
昔風の広告担当者は、人付き合いが良かったり、人望が厚い人などがガンガン広告を取ってこれました。今でもそうした面はあるのでしょうが、出版社もウェブメディアを運営する以上、別の発想を持った人が入るのは良いこと。
同様に、広告会社にしても、残業が減ることにより、頭が疲弊せずアイディアが冴えわたり、それにより多額のフィーを稼げて新たなる給与体制が生まれたり、人が流動化するがゆえの新たなクリエイティブが生まれたりする可能性もあるわけです。独立して何らかの専門性を高めた人もプロジェクトに応じて起用すれば、これまた大きな企画に繋がるかもしれない。少し引いた目で見ていると、そこまで悲観する必要はないのかな、と思っています。