20世紀後半、広告が大きな影響力を持っていた時代、電通や博報堂などの大手広告会社では社員たちもガンガン働いてガンガン遊んでいたイメージが強かったが、最近は業界内では以前ほど景気のいい声が聞こえなくなっているという。昔と今で広告業界で働くひとたちの意識はどう変化しているのか。博報堂出身のネットニュース編集者・中川淳一郎氏が解説する。
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私が会社に入った1997年に発売された『週刊SPA!』の「女性に聞いた合コン人気ランキング」みたいな特集では博報堂が1位に入り、「自分には関係ないが、ちょっと嬉しい」といった感情を抱きました。同社の内定を取った時も、私の実家の近所では「いい会社に入った!」と評判でした。
まぁ、クライアントの前では全然エラソーにできるような会社でもないのですが、それでも世間様の評価は高かったし、入社2年目以降にOB訪問に訪れてくる学生の数もすごかったです。4年でやめ、しばらくは広告業界との距離は置いていたのですが、2008年ぐらいからネットへの関心が広告業界でもグングンと高まっていった結果、再び私も広告業界との接点が増えるようになりました。
最近は大手から若手~中堅のエース級人材が次々と独立する例が増えています。そうした人々がやる気のある若手を採用し、活況が呈されているのは業界全体にとっては歓迎すべき状況です。
それでも、大手の社員の中からはボヤキが聞こえてくるのも事実です。元々電通も博報堂も高給取りのイメージが強かったです。しかし、電通で過労の末に自殺した社員が出たことによる22時以降の残業禁止令もあり残業代は大幅減に。電通の20代社員はこうぼやきます。
「ここ数年、メーカーに行った同期よりも私の方が給料は安いです。会社に入ったばかりの頃は私の方が多かったですが、今や逆転されましたし、これからも私が彼らを上回るイメージはあまりありません」