いまや二大経済大国となった米中間で追加関税の応酬が相次ぐ米中貿易戦争。「トランプ大統領が有権者に媚を売るための“政治ショー”にすぎず、早晩解決に向かうだろう」といった見方もあるが、はたしてそうなのか。カブ知恵代表の藤井英敏氏は「そんな単純な話ではない」として、次のように述べる。
「米国と中国という世界の二大経済大国がこれから本格的な覇権争いを始めていき、それは5年、10年、あるいはそれ以上の長期タームで考えておいたほうがいい。いま各国の情勢を左右しているのは、どう考えても、政治ではなく『経済』。あれだけ強烈な発言を繰り出すトランプ大統領にしても、大型減税や大規模インフラ投資などで米国経済を巡航速度に乗せているからかろうじて支持を集めている。
中国の習近平・国家主席にしても、中国共産党一党独裁への人民の不満は根強いのに、どうにか経済を好調に維持しているから体制転覆には至っていない。今後も米中両国は強い自国経済を死ぬ気で維持する必要がある以上、互いの覇権をかけた貿易戦争が簡単に解決することはないでしょう」
世界最大の経済大国である米国は、戦後、急成長を遂げて世界第2位の経済大国となった日本に対して、繊維、鉄鋼、電機、自動車などの分野で、たびたび貿易戦争を仕掛けてきた。ただし、いずれも長期的に深刻な事態となるまでには至らず、日米関係は維持されている。同様に、米中の対立も激化することなく収束する可能性はないのか。
「日米貿易摩擦と比較すると見誤る。何より日本は米国の同盟国だが、中国は違う。むしろ大国同士が互いに譲ろうとしなかった、米ソが対立構図にあった東西冷戦時代をイメージしたほうがいいのではないか。当面の間は経済大国の名をかけた米中の覇権争いは続く。それが長期にわたるのは必至の情勢であり、短期的に楽観視している場合ではないだろう」(藤井氏)