年金受給者が亡くなった場合、遺族厚生年金を受け取れる対象は、亡くなった人によって生計を維持されていた配偶者、子供、父母、孫、祖父母だ。高齢で妻と子供のいない独身男性が亡くなった場合は、年老いた父母に遺族年金を受給する権利が発生する。
この場合、父母の生活費や療養費などを故人が負担し、生計を維持するための援助をしていたと認められることが要件となる。
父母がすでに自分の老齢年金を受給している場合は、子供の遺族年金と比べて金額の多いほうを受け取れるが、年齢からしてさほど長い期間の受給は望めない。
また、遺族厚生年金の受給権者が身内におらず、不幸にして年金受給前に亡くなれば、せっせと納めた保険料は“お上の総取り”となるわけだ。
自営業者は特に厳しい
自営業者が亡くなった場合の遺族年金の支給条件はかなり厳しいものとなる。国民年金から年額77万9300円の「遺族基礎年金」が支給されるのは、18歳未満の子供がいる場合のみなので該当する世帯は限られる。社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。
「ただし、夫が国民年金保険料を3年以上納付したのち、年金を受給せずに亡くなった場合、妻は12万~32万円の『死亡一時金』を受け取れます」
また、国民年金保険料を10年以上納めた夫が年金を受給せず亡くなった場合、婚姻期間が10年以上ある妻は、60歳から65歳になるまで「寡婦年金」を受け取れる。金額は夫がもらうはずだった老齢基礎年金の4分の3で、夫が国民年金に25年加入し、約700万円の保険料を納めても、妻には年額36万円ほどしか戻ってこない。
死亡一時金と寡婦年金の要件にあてはまる妻は金額が多いほうを選択できるが、長い老後を支えるには心もとない額だ
※週刊ポスト2018年11月2日号