住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は「新百合ヶ丘(神奈川県川崎市)」について、ライターの金子則男氏が解説する。
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近年の住宅トレンドの1つが「タワマン」ですが、バブル期あたりまでは、一戸建てを求める風潮が顕著でした。今回取り上げる新百合ヶ丘は、「一国一城の主」「庭付き一戸建て」という単語が死語ではなかった時代に花開いた街。1980年代には、東急田園都市線の鷺沼やたまプラーザなどと並ぶ“憧れの街”でした。通称「新百合」の住心地はどんなものでしょうか。
鉄道は小田急のみ。多摩センター方面に分岐する「多摩線」も新百合ヶ丘駅から出ています。2004年には下北沢の次は新百合ヶ丘まで停まらない快速急行が登場したことで、「渋谷から2駅」(井の頭線の急行で渋谷→下北沢、小田急の快速急行で下北沢→新百合ヶ丘)をアピールする不動産物件も登場しました(ダイヤ改正により、現在、快速急行は登戸にも停車)。
ちなみに、田園都市線のあざみ野駅から、横浜市営地下鉄の延伸計画がありますが、実現するかは不透明。仮に実現したとしても完成するのははるか先になりそう。
道路状況は良いとは言えません。小田急と並行して走る頼みの綱「津久井道」は朝夕を中心に常に渋滞がひどく、東名高速、中央高速のいずれの入り口までもかなり時間がかかります。平地など一切ない丘陵地帯を切り拓いた街なので、車がないと移動が不便ですが、都内に出るにも、郊外に遊びに行くにも、相当な時間がかかることが多いようです。