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『家主と地主』編集長が語る「骨肉相続」トラブルの回避法

 だが、半年ほど前から父親に異変が起きる。同じことを何度も聞き返し、洋服を脱ぎ散らかすことが増えた。人と会う約束日時を間違え、慣れた道でも迷ってしまう。

 先日、A氏の弟に連れられて通院した父親は、認知症と診断された。「意思疎通不能」として父親の銀行口座は事実上凍結。父親の預貯金を動かすことや父親名義の不動産を売却することが不可能になり、生前贈与の口約束は白紙となった。

 A氏の母親はすでに他界しており、認知症が進行して遺書も書けない父親がこのまま亡くなれば、遺産は3兄弟の折半になる。すると次男が「実家は共同所有に」と主張し、三男は「不動産を売却して現金を3分割すべき」と求めるようになった。

 A氏が「家は俺のモノになるはずだった」と主張するも、弟たちは「親父がそう決めた確証はなにもない」と突っぱね、3兄弟の関係はいまや修復不能な状況になっている。

 A氏のような悲劇を避けるには、「民事信託」をしておく必要があると、税理士の渡邊浩滋氏は説明する。

「民事信託とは、資産を持つ人がその管理や活用を信頼できる家族や専門家に任せる制度。信託を受けた人間は、自分の意思で柔軟な財産管理が可能です。Aさんの場合、認知症発症前に長男に民事信託をしておけば、不動産の生前贈与も含めて、かなり相続対策が進められたはずです。

 一方、認知症発症後に財産管理するには『成年後見制度』がありますが、こちらは裁判所への申し立てが必要で手続きに時間がかかるうえ、あくまで“当人の財産保護”が主目的のため、委任者の意向は反映できません」

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