外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案が国会で議論されているが、背景には経済界などから人手不足を訴える声が挙がっていることも考慮されているだろう。深刻な人手不足に悩んでいるのは飲食業界も同様だ。特に日本の飲食業界にとって、料理人は引く手あまたの状況になっているのだという。
30代の料理人男性・A氏は、ここ2年で3回転職している。いずれもより良い条件がついたからだ。
高校を卒業してから4年居酒屋で働き料理も学んだA氏は、続いて10年間別の居酒屋へ。給料の安さに若干不満を覚えたことと、気分を変えたいということもあって、2年前にレストランに転職した。この時は知り合いからの誘いだった。
「10年間いた居酒屋は居心地は良かったのですが、月給が22万円以上にならないのです。転職先では、勤務時間はより短いにもかかわらず27万円もらえました。続いて30万円の焼き鳥屋に転職し、今は33万円の居酒屋で働いています」(A氏、以下「」内同)
こうして好条件の仕事を次々と選んでいくA氏だが、その際に役立ったのが飲食店専門の転職サイトへの登録だという。
「様々な条件を入力するのですが、とにかくオファーがたくさん来ます。私のように和風、洋風、中華風すべて作れる料理人だと重宝されますが、さらに重要なのが過去に10年間同じ店で働き続けたという実績です。それだと『この人は辞めない』と思われるし、筋の良い客を連れてくると捉えられるからです」
飲食店からすれば、料理人は欲しいものの、できれば長く働いてもらいたいと考える。それだけ料理人が定着しない現状があるわけで、A氏は「同じ店で長く働いた経験がある人は転職する意志がなくてもとりあえず登録してみるだけで、自分の市場価値が分かるかと思います」と語る。