人が死亡すると、その人が所有していた財産は、配偶者や子どもなどが相続をする。この相続財産に課せられる税金が相続税である。相続税は、2015年から改正されているが、課税を強化する方向に改正されたため、富裕層だけではなく、中流層にも相続税が課税される可能性が高まっている。
これまで日本では、相続税は、相続をする人(=相続人)の税負担を緩和する方向で調整されてきた。1980~90年代にかけてのバブル期に地価が急騰したため、相続する財産の価格が増大したためである。しかし、バブル崩壊以降、地価が急落しても税率などは据え置かれていたため、税負担の軽減措置が行きすぎてしまったとの見方が台頭。2013年度の税制改正により、課税強化されることになった。相続税が課税強化の方向で改正されたのは、実に半世紀ぶりのことである。
最大の改正点は、「基礎控除の引き下げ」と「税率構造の見直し」。相続税への影響が大きいのは基礎控除の引下げである。相続する財産にかかる相続税を計算する際、財産の総額から差し引くことができる金額が相続税の基礎控除。基礎控除の金額が大きいほど、課税対象となる財産の総額は小さくなり、相続税も少なくなる。その基礎控除が、従来の水準と比較すると、ほぼ4割縮小されたのだ。
その結果、相続税を支払わなければならない相続の件数は、大都市圏では改正前と比べて倍増すると、税理士などの専門家は分析している。具体的には、マイホーム、特に一戸建てを大都市圏で所有している人の財産には、相続税が課税される可能性が高くなっている。従来、相続税といえば、富裕層にかかる税金と思われてきた。だが、改正により中流層にも課税される“一般的”な税金になりつつある。