アジアの中でも、世界各地から多くの富裕層が集まっているシンガポール。そこでは、夫婦のあり方や恋愛市場も日本とは一味違うようだ。『シンガポールで見た日本の未来理想図』(講談社+α新書)の著者で、当地に住むファイナンシャル・プランナーの花輪陽子氏がシンガポールにおける「男女の力関係」をリポートする。
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日本や韓国など男性社会の国では結婚して子供ができて、女性が働き続けていても女性が家事・育児の多くをこなさなければならないケースもあります。が、シンガポールではまったく違います。圧倒的に女性の方が立場が強いのです。
シンガポールでは、「女性だから」という理由で日々の家事・育児などをすべて押しつけられるようなケースは、ほとんどありません。例えば、シンガポーリアンの友人・Aさん。出産後はシンガポーリアンでは珍しく専業主婦になりました。夫は年収2000万円のハイスペック男性。
それでも、保育園に子供を送り出すのは夫の仕事です。なんとAさんは夫と子供が出かけた後も寝ているのです。遅くまでネットサーフィンをするのが趣味だからだそうです。掃除も週2回専門業者に依頼し、夕食は土日は外食で、平日もほとんどテイクアウト。夕方に保育園に子供を迎えに行くのは妻のAさんですが、夫も遅くまで残業するわけではなく、まもなく帰宅します。夫はエネルギーがあり余っている子供と夕方から遊ぶのも仕事になっています。
“何もしない”からなのか、太る女性も少なくありません。「私が投資をした対象で唯一2倍になったのは妻の体重だった」というギャグマンガがレストランのポスターとして貼られていたのには、笑ってしまいました。出産後に体重が2倍になるというのは、よく聞く話です。中華系の富裕層女性の間では「セレブリティは母乳をあげない」という発想をしている人もいます。母乳をあげなければ、産後の体重も減らないだろうということで、中には体重を戻すためにパーソナルトレーナーをつける人もいます。
シンガポールでは恋愛市場でも圧倒的に女性のほうが主導権を持っています。多国籍で開かれたマーケットのシンガポールでは恋愛もグローバル競争だからです。シンガポール人女性の間では、同じシンガポール人男性よりも白人男性の方が人気で、シンガポール男性は好きな女性に尽くし続けないと結婚してもらえないのです。デートの場所選びや食事の際のメニュー選びはもちろん、カバンを持つ、家まで送る、そして結婚した後も家事や育児を押し付けないで自由にさせ続けることを約束する──という具合です。