取り戻せるのは戦争中だけではない。農家の出稼ぎ、季節工、米軍キャンプの仕事をしていた期間など、申請漏れのケースは様々だ。
「父は、農閑期に出稼ぎに行っていました」
農家だった父親を亡くしたAさんからの相談に「探偵」は動いた。母親は認知症で、父親が働いていた会社の名前すら覚えていない。
柴田氏は農家仲間から話を聞き、3か月後、出稼ぎ先が埼玉の自動車工場と東京の運送会社だったことを突き止めた。そこで26か月の厚生年金加入期間があったとわかり、Aさん母子には、父親の未払いの年金約140万円が支払われた。
「遺族年金」も取り戻した
約20年前、Bさんの父親は、65歳になる直前に亡くなった。父親の年金加入期間が遺族年金の支給条件(300か月)を満たさなかったため、母親が受け取ったのはわずかな「死亡一時金」だけ。家計は苦しくなった。
「そういえば、お父さんは中学を出た後、結婚するまで高田馬場のパン工場で働いていたね」
最近になって、母親がそんなことを言いだした。
相談を受けた「探偵」は、父親の生年月日や結婚時期、当時の工場の名前から年金記録を辿り、73か月間の厚生年金加入期間を見つける。それを加算し、「遺族年金」の支給条件に達した。
Bさんの母親は、遺族年金320万円を取り戻した。それに加え、母の口座には2か月ごとに1万7000円の遺族年金が振り込まれている。
※週刊ポスト2018年11月30日号