元国税調査官で『やってはいけない相続対策』の著者・大村大次郎氏はいう。
「不動産は基本的に買った瞬間から価値が下がるので、途中で売ろうとするとほとんどの場合で損になってしまう。立地によっては買い手がつかないことも十分に考えられる。ましてや不動産の場合、購入にあたって手数料だけで3%取られるし、その上に消費税もかかってくる。相続税が安くなるメリット以上に、払うお金が多くなってしまうリスクが大きいのです」
“払ってはいけないお金”がどんどん膨れあがってしまう懸念があるのだ。しかも、結果として、そうしたムダな出費まで、妻や子が相続してしまう。
「買い手が見つからないような物件の場合、相続人は固定資産税や管理費などを払い続けなくてはいけなくなる。利用価値のある物件ならまだしも、そうでない場合は“お荷物”にしかならない」(榊氏)
値崩れしない物件を見つけ出してうまくやる人もいるかもしれないが、始める前にリスクをしっかりと認識することが大切だ。榊氏は続ける。
「相続対策をするなら、金融資産は生前贈与などで可能な限り減らすやり方が王道です。また、資産価値の見込めない不動産は手放す。いま売ると安いと感じても、売れるうちに売っておくほうがよほど賢明ではないか」
※週刊ポスト2018年11月23日号