節税のためと思って資金を投じた結果、大きな損失につながることもある。特に注意すべきなのが、「マンション投資」や「アパート経営」などの投資用不動産による相続税対策だ。
相続する際、現金や株式などの有価証券は時価で評価されるのに対し、不動産にしておけば、ローンによる借金分が相続資産から差し引かれるうえ、小規模宅地等の特例(*注)などによって資産の評価額を圧縮できる。そのため、生前からマンション投資やアパート経営をしておくことが、相続税対策になるという理屈だ。
【*注/他人に居住用として貸している場合は、200平米以下の宅地であれば、最大50%の評価額減額を受けることができる】
しかし、話題の新刊『払ってはいけない』の著者で経済ジャーナリストの荻原博子氏は、こうした不動産投資に懐疑的だ。
「マンションやアパートには『老朽化』というリスクがあり、他の投資商品とは違い持っているうちに価値が目減りしていくのです」
節税で始めたつもりが、むしろ資産を大きく減らしてしまうリスクがあるのだ。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が解説する。
「長期的には人口減少問題があるし、来年10月予定の消費増税後は地価が下落基調に転じると見られます。そうなると、たとえば相続税対策として1億円で買った投資用マンションの部屋が5000万円に値崩れするケースも珍しくなくなる。たとえ相続税がゼロで済んだとしても、肝心の相続資産が大きく毀損されてしまうのだから、完全に逆効果です」
図で例に示したような数千万円単位の損失が生まれかねない。また、いったん手を出すと、“撤収”するのが難しいのだ。