相続税は相続人がルールに基づいて遺産を評価し、税額を計算して国に納付する「申告主義」が建前だ。だからといって、過少申告をすれば税務調査が入る。
一方、相続税を払い過ぎた場合、税務署から「多過ぎる」と税金を返してくれることはほとんどない。『相続税は過払いが8割』の著者で税理士法人アレース代表の保手浜洋介氏が語る。
「これまでに受けてきた相談のうち、78%のケースで相続税の過払いがありました。原因のほとんどは、不動産等の評価額を高く見積もり過ぎていたものです」
土地の評価額算定は難しく、同じ面積でも形や接する道路の状況、騒音などの環境、借地権の有無等によって評価額に違いが出る。
「税理士は税務のプロですから、税金計算でミスが起きることはあまりありません。しかし、不動産の評価に不慣れな税理士は、土地の特徴に応じた適切な評価、とくに減額ができていないケースが多い」(同前)
保手浜氏は相続税のセカンドオピニオンを勧める。
「税務署に払い過ぎた相続税の還付請求をするには、“申告時の不動産評価額は誤りで、正しい評価額はこうなる”と専門的な見地から積算根拠を提示して認められなければならない。
登記簿や地図で確認するだけではなく、必要に応じてメジャーや水準器、騒音計などを用いた『現地調査』と、土地や道路、周辺の法的・行政的な位置づけや規制を確認する『役所調査』を行なう必要があります」(同前)
相談無料で、還付があった場合にのみ成功報酬を受け取る税理士事務所もある。払い過ぎた相続税は、5年まで遡って取り返せる。少しでも疑問があるなら、訪ねる価値はある。
※週刊ポスト2018年11月30日号