今回の事件への反応は、フランスでは日本とは全く違ったものとなっている。パリ在住歴が長く、フランスの国内事情に詳しいジャーナリスト・南陽一浩氏の話。
「逮捕翌日のフランス経済紙『レゼコー』には、今回の司法取引による逮捕までの迅速さと日本の特捜の“見事な腕前”を皮肉った記事が掲載されました。フランスでは、“ゴーンが寝首をかかれた”というニュアンスで報じられている印象です」
欧州を拠点に活動するジャーナリスト・宮下洋一氏もこういう。
「フランスで著名な政治ジャーナリストのジャン・ミシェル・アファティ氏は、逮捕後に現地のラジオ番組で、日産がゴーン氏にだけ責任を押しつけるようなやり方をとったことに対して非難するコメントをしています」
こうした違いが生まれる背景には、日産とルノー、そしてフランス政府の微妙な緊張関係があるのだろう。ジャーナリストの伊藤博敏氏が言う。
「欧州メディアでは、ゴーン容疑者が『ルノーと日産の経営統合』を計画しており、その実現が“数か月後”に迫っていたと報じられている。ルノーはフランス政府が大株主であり、経営統合は“日産がフランスの企業になる”ことを意味する。そこに日産の経営陣は強く反発したとされる」
日産の経営陣が経営統合に強く反発していたとみられる最大の理由は、「ルノーの大株主であるフランス政府の影響力が強まることへの警戒感」(経済部記者)だ。
では、ゴーン容疑者が去ったことで、日産側の懸念が完全に排除されたのかというと、必ずしもそうではなさそうだ。