本誌・週刊ポスト取材(2016年4月29日号)に鈴木氏は「創業家とゴタゴタするようなことになれば、経営者として話にならないと思った」と辞任の理由を語っている。
会社の私物化疑惑が浮上したという点では、30年以上前に三越(現・三越伊勢丹)で起きたケースと似ている。
「三越の天皇」と呼ばれた岡田茂社長は1982年9月、愛人の会社に仕事を発注するなど会社を私物化していると問題視され、取締役会で電撃解任された。掌握していた取締役たちの“謀反”を前にした岡田氏が発した「なぜだ!」の言葉は当時流行語にもなった。
「岡田氏は新入社員からの叩き上げで、実はこの3社とも創業家を追い出したわけではない。だから企業の骨格そのものが変わることはなく、三越にしてもセブンにしても、同じビジネスモデルで集団指導体制に移行しただけ。良くも悪くも業績に影響はありませんでした」(同前)
一方で、日産のクーデターがこれまでのものと比べて異質なのは“公権力の手を借りた”ことだろう。
「クーデターが起きてからトップが逮捕されるケースはこれまでもありましたが、司法取引制度という新たな手法が使われたことにより、今回はトップの逮捕からクーデターが始まった。これは初のケースではないでしょうか」(同前)
だからこそ、この先の行方も容易に見通せない。
※週刊ポスト2018年12月7日号