日本人の平均寿命は男性約81.1歳、女性約87.3歳(2017年)に達した。「人生100年時代と騒がれているけど、平均寿命がそこまで延びるのはまだ先の話」――このデータを見て、そう考える人も多いのではないか。しかし、それは大間違いである。
実は、日本人の“本当の寿命”はもっと長い。現在55~60歳の男性の「2人に1人」は90歳超、女性の半数は100歳近くまで生きる――そう推定されているのだ。
なぜ、公表されている平均寿命と“本当の寿命”に乖離があるのか。計算方法に理由がある。
「平均寿命」とは生まれたばかりの新生児(生後0週)の推定寿命であり、年齢別の死亡率をもとに計算される。若いうちに亡くなるケースも計算に含まれることから、実際の寿命よりかなり低くなる傾向がある。
それに対して、ある年齢に達した人がこの先、何年生きるかを推計したのが「平均余命」だ。最新の統計(厚労省「平成29年簡易生命表」)によれば60歳の人は男性83.7歳(平均余命23.7年)、女性88.9歳(同28.9年)まで生きると推計されている。
しかし、この平均余命でさえも日本人の長寿化の実態を反映しているとはいえないという指摘がある。
85歳で死んだら“短命”です
医療経済学者の永田宏・長浜バイオ大学教授(医学博士)が語る。
「厚労省の平均寿命や平均余命は年齢別の死亡率が変わらないという前提で計算される。しかし、医療の進歩などで死亡率が年々下がっているため、各世代(生まれ年)別の平均余命は年齢を重ねるにつれて長くなっていく現象が起きる。過去30年間の傾向を分析すると、男性の平均寿命は10年で1.8歳、長くなっています。人生のゴールが年々先にズレていくわけです。
その結果、“自分が平均寿命に到達するタイミング”では、同い年の人の6割が存命していることになるのです。つまり、公にされている平均寿命の数字を基準に考えていると、過半数の人が“思ったより長生き”してしまうことになる」