そもそも中国は、5月に行われた米中経済貿易協議の後で、譲ることのできない3つのボトムラインを発表している。
【1】中国は輸入拡大を積極的に進めることで貿易不均衡を和らげる。輸出を減少させるといった消極的な方法はとらない。
【2】当初アメリカ側が提示した2000億ドルの貿易黒字を削減させるなどといった指令性計画指標は設定しない。
【3】「中国製造2025」(2015年に中国が発表した今後10年間の製造業発展のロードマップ)について圧力をかけて潰すようなことはせず、中国は産業のレベルアップの追求を続け、自らが発展する権利を守る。
アメリカのナバロ大統領補佐官や、通商代表部のライトハイザー代表など、対中強硬派の要求する「中国製造業2025」の撤回はありえない。トランプ大統領もそのことを十分理解した上で、今回の合意に至ったはずだ。
中国国内には、「中国は世界第2位の経済大国であり、失ってしまえば代替のきかない巨大市場である。完成度が高く、よく整備された産業チェーンがあり、インフラ設備やビジネス環境が整備されている。たとえアメリカであっても、合理的な観点からすれば、中国と本気で貿易戦争を仕掛けてくるはずはない」といった考え方を持つ有識者は多い。
これまでの言動や行動を見る限り、トランプ大統領は単純に中国の台頭を懸念するというよりも、自分の支持者が何を求めているのか、次の大統領選挙に勝利を収めるためにはこの問題をどう扱えばよいのかという観点を大事にしている。中国市場を失うことによる経済的損失を十分認識しているはずだ。