日本人の平均寿命は男性約81.1歳、女性約87.3歳(2017年)に達したが、実は、日本人の“本当の寿命”はもっと長い。同い年の2人に1人がその寿命まで生きる「50%生存年齢(寿命)」を試算すると、現在55~60歳の男性の「2人に1人」は90歳超、女性の半数は100歳近くまで生きると推定されている。人生100年時代は“遠い将来世代”の問題ではなく、現在の50代、60代の世代が直面する現実なのだ。
人生100時代を見据えるとマイホームの老朽化は見落とせない。木造住宅の寿命は平均30~40年とされ、マンションも50~60年経てば老朽化が進んで建て替えを具体的に検討する段階になる。
現役時代に「終の棲家」として購入したはずなのに、高齢になって高額な建て替え費用を負担できず、家を手放さなければならないケースがこれから増えてくる。ニッセイ基礎研究所の村松容子・准主任研究員が語る。
「人生80年時代には、子供がリタイアする頃、親が平均寿命を迎えて家や預貯金を受け継いで年金生活に入るという相続のサイクルがあった。
しかし、寿命が延びても退職年齢は65歳だから、子供がリタイア後も働いて十分な給料を得るのは容易ではありません。親子とも年金生活という期間が長くなってしまい、相続財産をどんどん切り崩して食いつながなければならなくなる」
そうして蓄えが尽きてしまえば――。年金、相続から介護、老人ホームへの入居まで、発想を根本から変えなければ、親子2代の老後資産の破綻が待ち受けている。
※週刊ポスト2018年12月14日号