親の介護や看病をするために仕事を辞めなければならない「介護離職者」は年間10万人に及ぶ。
最も多い世代は女性50代後半、男性は60代前半だ。定年後、年金をもらうまで雇用延長や再雇用で働くつもりだったが、親が寝たきりになったためにやむなく離職を選択した事情がうかがえる。
しかし、10年も経てば、介護離職した世代が今度は「介護される側」に回る年齢になっていく。寿命だけは伸びて親は寝たきりのまま、子も体がいうことをきかなくなって介助がほしい。そうなったら親子2代の“要介護者”を誰が面倒見るのか。
「まさか赤ん坊の時にオムツを替えてあやしてやった孫から、100歳近くになった自分が下の世話をしてもらうことになろうとは……」
そう、孫しかいない。そんな時代の兆しはすでに現われている。埼玉在住のAさん(75)は2年前に脳梗塞で倒れて右半身が不自由になった。長男家族との同居を決めたのは孫の存在が大きかったという。
「私が倒れて介護が必要になった時、一家の大黒柱の息子が仕事を辞めるわけにはいかず、就職が決まらずにバイトをしていた孫が面倒を見てくれるようになりました。車椅子を押してリハビリにも連れて行ってくれる。おかげで助かっていますが、孫は私の世話にかかりきりで就職活動ができない。孫の将来を考えると可哀想で……」