米国の対中貿易赤字を解消する方法は2つあるが…
普通に考えてみても、米国の巨額の対中貿易赤字が、解消に向かう合意策は、そう簡単には見つからない。仮に巨額の対中貿易赤字を解消せさる策があったとしても、中国の立場で見れば、到底、それを受け入れることはできないだろう。
米国の巨額の対中貿易赤字を解消する方法は、「中国が米国から、巨額の輸入をする」あるいは、「中国が米国に輸出をしない」ということだ。
中国が米国から巨額の輸入をするとしても、それに見合う物品(適合する品物)はなかなか無い。中国が米国から大豆などの農産物を大量に輸入しても、金額ベースで考えると、貿易問題を解消するには程遠いだろう。また、仮に米国から農産物を大量に輸入する場合には、中国国内の農業従事者を保護する政策も必要となる。
金額ベースで考えると、中国が米国から自動車や機械を大量に輸入する方が理に適うわけだが、中国国内のそういった産業分野からは、当然、反発が起こるだろう。
さりとて、中国が米国に輸出をしないことも、事実上、不可能と考えている。米国に代替して、中国で生産された物品を、大量に消費できる国も、おいそれとは見つからないからだ。
だから、米中の貿易摩擦問題は、簡単には解決には向かわないのだ。
個人的な意見だが、G20の理念は素晴らしいのだろうが、実質的にはG20は形骸化しており、決定力に欠けると考えている。米中に貿易摩擦問題があるのならば、さっさと米中首脳会談を行えば良いのに、2国間で対応せずに、今回のG20まで、先延ばししてきた。G20があったので、仕方なしに米中の首脳がテーブルに付いただけに映る。
それでは、双方に、解決に向かう本気の姿勢が見えない。だから、ブエノスアイレスのG20は、個人的には全く期待できないと考えていた。案の定、今回の米中の合意は、単なる90日間の先延ばしに過ぎない。2国間の問題が、何かしらの解決に向かっている訳ではない、というのが現状なのだ。
(2018年12月06日東京時間13:30記述)
◆松田哲(まつだ・さとし):三菱信託銀行、フランス・パリバ銀行、クレディ・スイス銀行などを経て、オーストラリア・コモンウェルス銀行のチーフ・ディーラーとして活躍。現在は松田トラスト&インベストメント代表取締役として外国為替や投資全般のコンサルティング業務を行う。HPは「松田哲のFXディーラー物語」(http://matsudasatoshi.com/)。メールマガジン「松田哲の独断と偏見の為替相場」も発信中。