華為技術の半導体チップ購入金額は世界第5位
アメリカがどこまで踏み込んで、制裁を課すのかについてはいまのところはっきりしない。華為技術は、通信機器メーカーとしては世界トップクラスの企業であり、アメリカ企業との取引量も多い。
Gartnerの資料によれば、2017年における華為技術の半導体チップ購入金額は142億5900万ドルでサムスン電子、アップル、デル、レノボに次いで世界第5位である。また、前年比32.1%増加している。
スマホ、PCサーバー、通信設備などを生産しており、2000社超の仕入先を抱えている。影響は全世界的に広範囲の企業に及ぶ。国信証券のレポートによれば、金額ベースで取引額の大きい企業は、物流サービスのDHL、PC組み立ての富士康、半導体チップのクアルコム、アナログ・デバイセズなどである。そのほか、ブロードコム、インテル、テキサスインスツルメンツ、マイクロソフト、オラクル、シノプシスなど、多くのアメリカ企業が仕入先として名を連ねている。
また、米中貿易摩擦が激化する中、アメリカが本国市場から中国企業を締め出そうとするならば、アメリカ企業は人口が14億人に迫る中国市場から締め出されかねない。華為技術への制裁や追加関税率の引き上げを行い、これ以上米中貿易摩擦をエスカレートさせれば、アメリカ経済や株式市場にも悪影響が出かねない。
アメリカの株式市場は足元で、株価が乱高下している。もし、弱気相場入りとなれば9年半も上げ相場が続いた後であるだけに、数年の下げトレンドが出かねない。そうなると2年後の大統領選でトランプ大統領の勝ち目もなくなるかもしれない。トランプ政権としては厳しい選択を迫られることになりそうだ。
日本の株式市場にとって大きいのは、日経平均株価への寄与度の高いソフトバンクグループ、そして2兆円超の大型上場となる子会社・ソフトバンクへの影響だろう。ソフトバンクのIPOについて、売り出し価格は1500円に決まった。だが、華為技術、ZTEとの関係が必要以上に嫌気されれば、上場後に株価が低迷するような展開もあるかもしれない。米国市場だけでなく、日本市場にとっても華為ショックがどこまで波及するのか、注視しておきたい。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。