手術以外にいくら必要?
掲載した表を見てほしい。前出の「がん治療費.com」が蓄積するデータをもとに、5年間の治療過程でかかった費用の「総額」を算出している(胃がん、肺がんのステージIVなど、1年間の総計のケースもある)。
まず知っておきたいのは、「手術」「放射線」「抗がん剤」の三大療法以外にも、治療後の定期検査など必要な費用が多く存在するということだ。自身も乳がんを患った経験を持つ、FP(ファイナンシャルプランナー)の黒田尚子氏が解説する。
「病院に支払う医療費は、初診・再診料などの診察にかかる費用に加え、手術・放射線・抗がん剤などの治療費、その前後に行なうMRIやCTなどの画像診断料、血液検査やエコー検査などと多岐にわたります。
私が乳がんになった時も、抗がん剤治療に適応するかどうかを調べるために、別の病院で心臓の検査を受けました。がん治療費は、こうした費用が積み重なっているのです」
がんにかかる費用は、時として100万円以上する手術費、数十万円する検査費と積み重なり、額面だけ見ると高額なケースが多い。例えば、表のステージIの大腸がんの切除手術の場合をみても、手術費が107万2210円、総額144万5180円となっている。
しかし、「総額」の項目の隣にある「自己負担額」の数字をみると、20万43円になっている。日本では、公的医療保険により患者の自己負担が3割で済むうえ、この自己負担額をさらに減らす「高額療養費制度」があるからだ。
「高額療養費制度とは、1か月に支払った医療費の自己負担額が一定限度を超えた場合、超えた金額が支給される制度のことで、保険適用の治療にのみ申請できます。限度額は年齢や収入で異なりますが、70歳未満で年収約370万~約770万円の一般的な収入の人は、例えば医療費が月額100万円かかった場合も実質的な自己負担額は月8万~9万円になります」(黒田氏)
表の「自己負担額」は高額療養費制度を適用した後の費用を記したもの。保険が適用される治療だけならば、自己負担は大幅に抑えられるのだ。
※週刊ポスト2018年12月21日号