【3】冬物語 1995年版(サッポロビール)
カズンの「冬のファンタジー」をバックに、北浦共笑さんが雪が積もった屋根の上に寝っ転がって冬物語を飲んでいたら仲間がやってきて皆で家の屋根の上でビールを飲む、という無茶苦茶なシチュエーションなのですが、当時マーケティングを勉強していた身分としては、「季節限定商品」というのは非常に関心が高かったこともあり、このCMは非常に印象に残っています。当時は「鍋の季節の生ビール」みたいな商品があったり、晴れた清々しい日に飲む「太陽と風のビール」なんてものもありましたね。
【4】クリスマスエクスプレス(JR東海)
このシリーズについては、1988年の深津絵里さんバージョンと1989年の牧瀬里穂さんバージョンが白眉として知られております。しかしながら、2000年の星野真理さんが登場するバージョンに深津さんと牧瀬さんが「見守るお姉さん」的に登場するものも秀作です。若き日にモテることのなかった私としては「けしからん!」と言いたくなる一連のCMではありますが、やっぱり恋愛っていいものだな、と思わせる出来栄えです。
【5】キンチョール(大日本除虫菊)
故・大滝秀治さんが岸部一徳さんに対して「お前の話はつまらん!」と説教をするCMです。キンチョールが地球環境に優しいものになったことについて岸部さんが滔々と説明する中、「つまらん!」と言い放つ大滝さんが2003年に話題になりました。【1】で紹介した佐藤雅彦さんの「作家性」と合わせてこれも電通関西にいた山崎隆明さんによるものだと分かる点が素晴らしいです。
【6】どうする、俺(ライフカード)
2000年代中盤、「続きはWEBで」が流行りましたが、その走りのようなCMです。オダギリジョーさんが人生の様々な選択で悩み、さて、この後はどんな展開になる? をウェブで見せようとするいわゆる「メディアミックス」型のCMです。いかにネットとマスを融合させるか、という実験の先駆けとしてここに挙げさせていただきました。
【7】春咲き生ビール 1995年版(キリンビール)
EPOの「う・ふ・ふ・ふ」に合わせて大塚寧々さんが桜が散る様子を見て「春だ」と気付くところから始まります。1995年3月、私自身は村上春樹さんの小説に出てくるビールが好きな孤独な若者に憧れていた痛い学生でした。春休み、JR中央線の国立駅から南に伸びる大学通りを歩きながら勝手に孤独な感傷に浸っていました。誰と会うでもなく過ごした春休みだったのですが、このCMに出てくる大塚寧々さんの「忙しい中、春だと気付き、仕事に熱中している場合ではない! 友人と一緒に春咲き生ビールでも飲むか!」という感覚を自らに重ね合わせ、大学通りの桜の下、一人このビールを飲んだ思い出があります。