十二支で1年の金融市場の行方を占う格言がある。「辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ。戌(い.ぬ)笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)跳ねる」というものだ。
申年である2016年は「騒ぐ」年だ。波乱要素が多く、相場が乱高下しやすい年と解釈されている。
年明けからの株式市場を振り返ると、取引初日である大発会はリーマンショック前の2008年に次いで過去2番目の下げ幅となる582円もの大幅安となり、その後の波乱を思わせる不穏なスタートとなった。悪い予感は現実となり、年初から日経平均株価が6日連続下落という戦後最長記録をマーク。その後もわずか1か月半の間で3500円近く下落したうえ、1日で1000円近い値動きをする日もあるほど日々の値動きは荒く、上下の振れ幅が極めて大きい不安定な相場となった。現段階では申年のジンクスは恐ろしいほど的中しているといえるだろう。
今後も、アメリカの利上げや中国経済の減速懸念、原油価格の下落に加え、2017年に控える消費増税、イスラム国によるテロの脅威など、相場を揺り動かしそうな要因は数多くあり、格言通りの乱高下が続いても不思議はない。投資家は十分警戒して市場に向き合う必要があるだろう。
ちなみに、大発会で急上昇した銘柄は、1年を通して注目銘柄になるというジンクスもある。市場関係者が語る。
「2015年を振り返ると、この年の大発会は主力銘柄が下落する中、東証1部の出来高ランキングでトップをつけて7%も上昇したのが、三井住友建設でした。国土強靭化や東京五輪などで需要が期待されての急騰でしたが、現実にはこの年の秋に、『傾斜マンション』問題で悪い意味での注目を浴びる存在になりました」
皮肉な結果ではあるが、ジンクスが的中した例といえるかもしれない。では、注目の2016年の大発会はどうだったか。東証1部で最も躍進したのは、金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」関連銘柄として物色を集めたさくらインターネットだった。翌日以降も上昇を続け、876円で2016年をスタートした同社の株価は翌週には2110円の高値をつけ、2月に入っても高い水準で取引されている。はたして今後、ジンクス通りの値動きとなるか、注目していきたい。