新しい使い方を消費者に理解してもらうことも重要
同様に、機能面を考慮してパッケージを変えて成功したケースがある。ミツカンの納豆「金のつぶ パキッ!とたれ とろっ豆」だ。もともと、タレは小袋を切って開ける形状だったが、開けづらく、食卓や服を汚してしまうことがある、という声も出ていたという。さらに小袋はビニールゴミとして出さなければならない点も、消費者からすれば煩わしい点だった。
タレをゼリー状に固ためるなどの工夫を施したが難点はそれでも残り続けた。そこで、問題を根本から解決すべく着想したのが、新たなるパッケージの開発である。「蓋にタレを封入し、上からフィルムを貼って密封しました。この蓋をパキッと2つに割ることにより、とろっとしたタレが出てくるのです」(同社広報)。これによりタレの飛び散りなどを避けることが可能になり、2012年に発売された。
開発にあたって同社が留意したことは2点あるという。1つは「割る動作を楽しくすること」で、もう1つは「納豆の乾燥をコントロールすること」である。
蓋を割る際は、単純に割るだけでなく、気持ちのいい音や感触になるようこだわりを見せた。同社で通常の容器の開発は3か月ほどかかるところを、この商品にかけた期間は3倍の18か月にも及んだ。試作容器も40種類あり、割った蓋の数は数え切れないという。
乾燥のコントロールについても大きなポイントだった。丈夫でタレがもれないという基本的な要件を満たすようにするはもちろんのこと、一方でおいしさを追求するためには、納豆と空気が多少触れていることも必要となる。納豆という商品の場合、菌が生きているため、完全に密閉すると発酵が進まないからだ。とはいえ、逆に空気に触れすぎてしまうと乾燥を早めてしまう。新パッケージはフィルムがないのでこれまでの常識が通じない。そこで、蓋の中心をへこますことで、割りやすさを保ちつつ、乾燥をコントロールすることを実現させた。
ようやく新パッケージができあがったが、もう一つ、困難があった。消費者に新しい使い方を理解してもらうことだ。容器のフィルムに使い方を記載するだけでなく、店頭POPやCM展開などでも使い方を訴求させた。販売エリアは、まず京阪神エリア限定で発売し、徐々にエリアを広げていった。結果、従来の3倍の売り上げをマークし、好評を得た。「とろっ豆」は発売から10年経過し、売り上げた数は18億食を超える。かくして同商品はミツカンのナンバーワン売上商品に成長。「より便利に食べられる」「蓋を割る楽しさがあり、子どもも楽しめている」と好評の声が相次いでいるとのこと。