中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

うつ病は死に直結する病気 本当の恐ろしさは周囲の無理解

 Aさんは会社勤めをしていたのですが、毎朝起きることが困難でした。寝るためには睡眠薬は必須でした。複数の目覚まし時計を使い、なんとか起きて定時である9時に出社をしようと思うものの、どうしても体が動かない。布団から出られないのです。定時に間に合うには8時10分には家を出なくてはいけない。8時3分、「あと7分でなんとかなるかな……」と思うものの結局体は動かず8時30分、管理部門の人が出社する時間に合わせて会社に電話をし、「午前半休にしてください」とお願いをします。

 なんとか13時に出社はできるのですが、同僚からすれば「なんでAさんは毎朝いなくて私達がAさんの尻拭いをしなくちゃいけないの?」と思ってしまいます。職場に対しては鬱病のため心療内科に通院していることは伝えていたのですが、誰も鬱病の症状がどういうものなのかを知らないのです。生前、Aさんが言っていた症状は以下の通りです。

「起きられません。無理矢理起きても頭がドーンと重くて布団から出られません。布団を頭からかぶって『助けて!』と心の中で叫びます。そして、外に出たいと思うのですが、少しでも寒かったりするともう無理です。意を決して布団から出ても、おしっこをするぐらいが限界です。朝ごはんを作る余裕なんてまったくありませんし、無理をして外に出るかあるいは布団に戻るかしかもはや考えられないのです。

 電車に乗るのも怖いです。特に朝の満員電車はキツイです。1本やり過ごせばもう少し空いている電車が来るかと思ってやり過ごすも、次の電車も混んでいます。結局30分ぐらいこの状態が続き、会社には遅刻をしてしまいます。空いている時間に『電車に乗るトレーニング』をする必要もありました」

 Aさんは「外に出てアクティブに活動をし、人と喋れば鬱病なんて治るよ!」と言われ、様々な誘いを受けましたが、いずれも断りました。するといつしかAさんは「付き合いが悪い」「人の善意を無下に扱う」といった評価をされるようになりました。

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