黒田バズーカにマイナス金利──。日本の中央銀行である日本銀行の金融政策が、大きなニュースとして注目を集めている。では、それらの政策が景気や株価対策にどうつながるのか、どれだけの人が理解しているだろうか。
マイナス金利に副作用はないのか? こんなに国債を買い上げて大丈夫なのか? これから景気はよくなるのか?
“お金のお医者さん”として知られる「家計の見直し相談センター」の藤川太氏が、そうした様々な疑問に答えるべく、日銀の“家計”を、財務諸表などをもとに緊急診断した。
日銀が行なってきた金融政策の推移
本来、金利はお金を預かった側が払うものです。ところが1月29日、日本銀行は預けた側が金利を負担するという「マイナス金利」を打ち出し、大きな話題となっています。
日本の中央銀行である日銀がなぜ、こんな〝奇策〟に打って出たのか。それを理解するために、日銀の役割と政策について順を追って説明しましょう。そもそも日銀は「銀行のなかの銀行」といわれるように、民間の銀行同士の資金繰りを調整する「金融システムの安定」という役割を担っています。そして日本銀行券(紙幣)の発行と金融政策の舵をとることで「物価の安定」を図ることが求められてきました。
金融政策とは、日銀が民間銀行に貸し出す際の政策金利を上げ下げしたり、世の中に出回っている現金と民間金融機関が日銀に預けている当座預金を合わせたマネタリーベース(資金供給量)を調節したりすることです。民間銀行は預金の払い戻しなどに備えて一定割合以上を準備預金として日銀に預けることが義務づけられており、その預け先が当座預金です。当座預金は日銀が民間銀行の保有する国債を買い取る代金をやりとりする口座でもあり、その量を増やすことで世の中にお金を溢れさせ、景気回復を図ろうとする政策が「量的緩和」なのです。
実際、これまでどのような金融政策がとられてきたか。2000年以降の推移を見てみましょう。
小泉政権下の01年に政策金利を実質ゼロまで引き下げるゼロ金利に踏み切った日銀は、さらなる景気浮揚に向けて、マネタリーベースをそれまでの62兆円から114兆円まで増やしました。
そして景気にやや過熱感が出てくると、日銀はマネタリーベースを減らし(市場から資金を吸い上げ)金利を上げる、金融引き締めに転じています。ところが、07年のサブプライムローン・ショック、08年のリーマン・ショックで世界的に景気が悪化。日銀は再び金利を下げ、マネタリーベースを徐々に増やしていきました。とはいえ、そのペースでは一向に景気が回復しませんでした。
そこで登場したのが、黒田東彦総裁です。13年4月には「物価上昇率2%」というインフレ目標を掲げ、その達成に向けてマネタリーベースを2年間で2倍にするなど「異次元の金融緩和」を打ち出し、いわゆる「黒田バズーカ」を放ったのです。