政府が受給開始年齢の引き上げを検討するなど、年金大改悪を前にして老後の「お金」の悩みを抱えている人は少なくない。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が講師を務める老後資産セミナーでも切実な質問が飛び交う。そのひとつが「子供と同居する場合、税制面で得する方法はないか?」というものだ。
最近は30代や40代の子供が離職や離婚などを機に親元に戻るケースが目立つ。例えば、夫と離婚した娘が孫を連れて出戻った場合、「年金で娘と孫の暮らしを見てあげよう」と考えるかもしれないが、それは得策ではない。
「限られた年金で娘と孫の世話まで見ようとすると、一家総倒れになりかねません。そもそも年金受給世代が頑張って働いても多額の収入は望めません。それよりも現役世代の息子や娘には外で働いてもらって、老夫婦が孫の面倒を見るほうが制度面でも得になるケースが多い」(北村氏)
老夫婦が自営業者などで国民年金しか受け取っていない場合、「子供の扶養家族になる」という手もある。
「同居する親(65歳以上)の年収が158万円以下の場合、子供が親を扶養家族にすれば、税制上で有利になります。例えば70歳の父親を扶養に入れた場合、所得税は年間5万8000円、住民税は4万5000円控除され、税金は年間10万円ほど安くなります。親の収入が国民年金だけの場合、当てはまるケースは少なくないはずです」(北村氏)
※週刊ポスト2019年1月1・4日号