投資

IPO株の東証1部への市場変更 マザーズ銘柄に有利な仕組み

夏前にも上場が予想されているLINEなど、今年も様々な分野の有力企業がIPO(新規上場)することが期待されているが、IPO投資で利益を出すにはどうすればよいのか。IPO株を公募価格で手にするにはまず、幹事証券会社に口座を開き、その上でブックビルディングに参加すれば抽選で入手することができる。

あるいはたとえ公募価格で入手できなくとも、上場初値がついた後に購入してその後の値上がりを狙う「セカンダリー投資」もある。

そしてもうひとつ注目したいのは、IPO銘柄の市場変更、つまり“鞍替え”を狙った投資法だ。投資情報サイト「IPOジャパン」編集長で、IPO投資の第一人者として知られる西堀敬氏が解説する。

「IPOジャパン」編集長・西堀敬氏

「IPOジャパン」編集長・西堀敬氏

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IPO銘柄への投資法としては、上場直後の投資のみならず、上場後1~2年経った段階で新興市場から東証1部へ市場変更するタイミングを狙うのも有効だ。そうした可能性の高い銘柄を先回りして仕込めれば、大きなリターンも期待できる。

IPO企業が新興市場に止まる限り、個人投資家中心の株主構成にならざるを得ない。機関投資家がIPO銘柄を買うのは難しく、売り買いの需給が盛り上がらずに、株価はバリュエーションの低いままで放置されることが多くなる。

IPO株がこの状態から抜け出すためには、株主の大半が個人投資家から機関投資家に変わることが何より重要だ。そして、大口資金を運用する機関投資家は、投資対象を東証1部上場銘柄に限定し、ある程度売買代金のある銘柄を投資対象とするケースが多い。そのため、新興市場に上場していた企業が、東証1部に市場変更すると、一気に株主の構成が変わって、機関投資家の買いで株価が大きく上昇することがある。

直近の例を挙げてみよう。電力小売りを手がけるイーレックスは2014年12月に東証マザーズ市場に上場し、ちょうど1年後に東証1部への市場変更を果たした。その情報を材料に、昨年11月上旬は1200円台で推移していた同社の株価は上昇を開始し、今年1月6日には2345円の高値をつけている。

動画配信サービスを手がけるU-NEXTも、2014年12月の東証マザーズ上場からちょうど1年で東証1部に市場変更した。それを手がかりに同社の株価は、昨年11月につけた1058円の安値から1か月後には1687円の高値をつけるまで高騰した。

東証1部へ市場変更する場合は、その期において10億円前後の経常利益を出していることと、業績開示情報で数値修正を行なっていないことが最低条件といわれる。

ただし、同じ新興市場でも、東証マザーズ上場企業が東証1部に市場変更する際の時価総額基準が40億円となっているのに対し、ジャスダック上場企業の場合、直接東証1部にIPOする場合と同じ時価総額250億円以上という基準が適用される。

つまり、東証マザーズ銘柄は市場変更が比較的容易で、IPO後1年での市場変更も十分あり得るのだ。したがって、市場変更を先回りして仕込む戦略としては、東証マザーズ上場の銘柄を狙うのが得策といえる。

もちろん、これから上場してくるIPO銘柄も、その業績を確認しつつ、早ければ1年後の市場変更を狙って株価が落ち着いたところで仕込んでいく戦略も有効だろう。

IPO株が公募価格で手に入らなかったからといって、あきらめる必要はない。その後の投資チャンスを逃さなければ、大きな利益を手にすることも十分に可能なのだ。

◆西堀敬(にしぼり・たかし):1960年生まれ。投資情報サイト「東京IPO」編集長(2002~2015年)を経て、投資情報サイト「IPOジャパン」編集長に。IR説明会、セミナーなども多数行なう。著書に『最新版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』など。

※マネーポスト2016年春号

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