黒田東彦総裁が発表した「マイナス金利」以降、注目を集めている日本銀行(日銀)。日銀には、日本の中央銀行として金融システムや物価の安定を図る役割があるが、はたしてそのバランスシート(貸借対照表)はどうなっているのか。「家計の見直し相談センター」の藤川太氏が、日銀の「家計」を診断する。
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日銀の役割は、日銀が民間銀行に貸し出す際の政策金利を上げ下げしたり、世の中に出回っている現金と民間金融機関が日銀に預けている当座預金を合わせたマネタリーベース(資金供給量)を調節したりすることです。
民間銀行は預金の払い戻しなどに備えて一定割合以上を準備預金として日銀に預けることが義務づけられており、その預け先が当座預金です。当座預金は日銀が民間銀行の保有する国債を買い取る代金をやり取りする口座でもあり、その量を増やすことで世の中にお金を溢れさせ、景気回復を図ろうとする政策が「量的緩和」です。
さて、その当座預金は日銀にとって負債になりますが、そこにはほとんど金利がつきません。それに対し、資産として保有している国債には金利がつくため、日銀の利益は自ずと膨らみます。
実際、日銀のバランスシートを見ると、2014年度決算では1兆円余りの当期剰余金(民間企業の純利益に相当)を計上していますが、そのうち25%を法定準備金として積み立てるなどした残りの7567億円は国庫に納付しています(2015年度上半期の当期剰余金は6288億円)。
これが何を意味するかというと、政府の借金である国債は銀行などが大量に引き受け、その金利は政府が負担しています。その国債を日銀が買い取りますが、その代金はほとんど金利がつかない当座預金に積み上がる一方、日銀が保有する国債には金利がついて利益につながる。
そして、その利益が国庫に戻されるということは、政府が金利を負担しないで済む借金をしていることにほかなりません。いわば政府と日銀による「錬金術」が繰り広げられているようなものです。
ただし、この手法も長続きはしません。なかなかインフレに転じない環境だからこそ成立してきただけです。今後は行き詰まりを見せ、国家財政に重くのしかかってくるでしょう。
※マネーポスト2016年春号