2001年10月からスタートした確定拠出年金が、今年、大きく変わろうとしている。制度改正により、20~60歳のあらゆる現役世代が個人型確定拠出年金に加入できることになる。ファイナンシャルプランナーの松岡賢治氏が、税制面でのメリットについて解説する。
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個人型確定拠出年金に加入すると毎年数千円の手数料はかかるが、それで確定拠出年金のメリットが薄れるかといえば、誤りである。税制優遇の効果は“絶大”だからだ。
拠出時の所得控除をみてみよう。例えば、年間の課税対象となる所得が500万円の会社員がいたとする。この会社員が毎月2万円拠出すると年間合計額は24万円。所得税の税率は20%なので、24万円所得控除されれば、所得税は4万8000円(=24万円×20%)軽減されることになる。
加えて、住民税は10%なので軽減分は2万4000円。したがって、所得税と住民税を合わせて7万2000円が減税されることになる。拠出する金額が1万円でも3万6000円が減税される計算だ。
課税所得が「195万円超、330万円以下」の会社員は所得税率は10%となり、毎月2万円の拠出(年間合計24万円)で所得税+住民税の減税分は4万8000円、毎月1万円の拠出(同12万円)では2万4000円となる。数千円のコストを払ってもやる価値は十分にある、といえるだろう。
手数料以外のデメリットとしては、原則60歳までは資金を引き出せない点。流動性に乏しいといえるが、年金という資金の性格を考えると、簡単に引き出すことができないのは一概にデメリットとはいえないと考えられる。
また、確定拠出年金の加入者が、企業年金がある企業や公務員になった場合、確定拠出年金の残高を企業年金に移せず、新たな拠出もできないという問題があったが、2017年以降は制度改正で移管ができるようになる。
このようにデメリットは少ないが、加入や移管の手続きが、非常に煩雑である点は改善していくべきだろう。準備する書類の多さ、郵送によるやり取りなど、まったく旧態依然としている。投信のラインナップ拡充も必要だ。最近、信託報酬が割安なものが続々と登場しているが確定拠出年金の対象になっていない。既存の投信との兼ね合いもあろうが、制度改正で個人型が普及するチャンスを後押しする施策が求められる。
※マネーポスト2016年春号