J-REIT(不動産投資信託。以下、Jリート)市場に、日本銀行が打ち出したマイナス金利政策による新たな追い風が吹いている。投資妙味があるのはどの業界なのか。アイビー総研の関大介氏が解説する。
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Jリートは取得している物件内容で、オフィス系、ホテル系、物流系、住宅系、商業系などに大きく分類される。Jリート市場は全体的に需給関係も業績もよく、今年は死角が少ない相場といってよいが、特に投資妙味があるのがホテル系、物流系と私は考えている。
インバウンド(訪日外国人)による需要急増などを背景に、全国的にホテルが不足する状態になっており、ホテルに特化して投資するホテル系は収益もまだまだ伸びる見込みだ。不動産価格が上がっている一方で、ホテルから入ってくる収益自体の向上が大きく、今後も賃料の上昇によって不動産価格の高騰を相殺していくだろう。
ホテル系で注目したいのが星野リゾート・リート投資法人。収益の伸びを考慮すると、現在保有している物件だけでも当面、分配金の増加が期待できる。
倉庫を貸して賃料をもらう物流系は、景気がどちらに振れても底堅い傾向がある。景気が好調になれば荷動きが盛んになり、景気が悪化すれば、店舗を設けずにネットで注文を受けて倉庫から発送するビジネスが盛んになるからだ。物流施設もテナントの絶対的な需要が強く、活発な動きが続くだろう。
今回、この2つのセクターに注目したのには他にも理由がある。一般的な傾向として外国人投資家がJリートを買う際に好むのが、わかりやすいテーマのあるセクターだ。ホテル系と物流系はそれにも合致する。
ところが、2015年12月の米利上げ以降、ホテル系、物流系は外国人投資家の売りを浴びていたため、現在は割安感がある。ホテル系は時価総額が小さい銘柄が多く、売りを浴びると一時的に値崩れしやすい傾向があることを知っておきたい。物流系では、時価総額が比較的大きい日本プロロジスリート投資法人や日本ロジスティクスファンド投資法人などが、外国人投資家から売られ過ぎた感がある。
テーマ性と代表的な割安感のあるセクターとしてホテル系と物流系を挙げたが、オフィス系は既存物件(セイムストア)ベースで収益が増加してくる状況になっている。今年は、賃料単価の上昇によって増配する銘柄がかなり増えると思われ、わかりやすい増配基調セクターとして注目したい。
今年のJリート市場には追い風が吹いているが、「異常」な金融緩和の恩恵を受けている環境であることは忘れてはいけない。今の状態がこれから3年も4年も続くとは思えない。Jリート投資に関しては、必ず利益確定のシナリオを描いて臨んでほしい。調整のタイミングで買い入れ、購入時よりも価格が10 %以上上昇したら売り抜けて益出しする戦略が有効だろう。
※マネーポスト2016年春号