過去から現在まで、マーケットにビッグプレーヤーと呼ばれるつわもの達が、入れ替わり立ち代り出てきています。今回は、アンディー・クリーガーについてお話しましょう。
彼は、米国のバンカーズ・トラストという猛烈にトレーディングをすることで世界的に有名な銀行の、その中でも、超猛烈なトレーダーでした。因みに、当時のバンカーズ・トラストの会長は、「トレーディングでつぶれた銀行はない」と言いきり、トレーディーングを大いに奨励していました。
さてアンディー・クリーガーですが、為替市場へのデビューは実に唐突でした。もともと彼は通貨オプションのトレーダーで、そのヘッジで、為替市場に出てきたわけですが、叩いてくる金額がそれはもう半端な額ではなく、また一気呵成に叩いてきましたので、1週間もしないうちに、世界中のマーケット関係者の中で知らぬものはないという状態になりました。
彼の手口のひとつを、ずっと後になって彼の知り合いから教えてもらったのですが、ふーんと唸ってしまいました。たとえばドル/円が、109.55-60の時に、109.30のOffer(オファー、売り)をブローカーを通じて、マーケットに入れます。そうしますと、マーケットレートより、低いレートですから、買いが群がってきます。
これでとりあえず、500本(5億ドル、1本=1百万ドル)を売ります。次に、更に低い109.10のOfferを入れます。もちろんこれにも買いが群がってきます。これで追加の500本を売り、合計1000本(10億ドル)のショートとなります。この状態でマーケットは短期的にOverbought(買いすぎ)気味になってきています。
そこで彼は一斉に、他の銀行を何行も呼び、ダイレクトでプライスを聞き(Direct Deal)、とどめの更に1000本を叩き込みますから、完全にOverboughtになった他の銀行は堪りません。もう総投げ状態に陥り、マーケットにはBid(買値)もないまま急落します。そんな喧騒の中、彼は低いBidを出しながら、悠然と利食ったという寸法です。
今やリスク・コントロールが厳しくなり、こうしたディーリングは、基本的には外銀邦銀とも無理ですし、一部、アグレッシブと言われる米系投資銀行でも、ここまではもうできないと思います。
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