2016年のIPOが3月に入って本格的に始まり、昨年の15社から7社増えて22社となっている。年初から先週までに18社が新規上場してきたが、初値が公開価格を上回った銘柄が12社、同値が1社、下回った銘柄が5社となっている。勝率は66%と前年平均の89%から低下してしまった。
一方の初値騰落率のほうも、先週までの18社平均で42%と昨年の平均値87%から大幅低下となってしまった。
年初からの株安がIPO市場にも影響しているのかもしれないが、IPO銘柄を売買するのは個人投資家がほとんどで、個人投資家が保有する株式が評価損となっており身動きがとれなくなってきている可能性がある。
月末までに5銘柄がIPOするが、これまでの18銘柄同様に初値も大きく伸びるような期待は禁物と言えるだろう。
となってくると、IPO株は見捨てたほうがいいのか? と言えば、そうとも言えないところもある。実は、これまでにIPOした銘柄の中で、3月決算銘柄が複数あって、中には配当利回りで魅力的な銘柄もある。
以下は、3月にIPOした企業で3月決算銘柄かつ配当を出す企業の一覧である。
【上場日/銘柄/コード/市場/公開株価/3/18終値/配当金/配当利回り】
3月3日/中本パックス/7811/東2/1,470/1,412/62.5/4.4%
3月15日/富山第一銀行/7184/東1/470/463/14/3.0%
3月15日/ユーエムシー/6615/東1/3,100/2,073/有/n/a
3月15日/富士ソフトサービスビューロ/6188/JQS/890/900/20/2.2%
3月16日/昭栄薬品/3537/JQS/1,350/3,705/40/1.1%
3月18日/ヒロセ通商/7185/JQS/830/845/12/1.4%
3月18日/イワキ/6237/東2/2,000/2,084/78.8/3.8%
3月18日/アグレ都市デザイン/3467/JQS/1,730/2,825/80/2.8%
※3月18日終値ベースの配当利回り
3月18日の終値で3%以上の配当利回りの銘柄がいくつかあるが、3月決算銘柄の権利付き最終日は3月28日であることから、ほんの1週間しか保有していないのに配当が得られるということになる。
IPO株の人気は本当に儚いものである。新しい銘柄が出てくると、昨日の銘柄ですら忘れ去られてしまう。つまり、上場直後は買い上がられても、数日後には売り込まれるということである。
今後の株式市場の動き次第で、上記のリストの銘柄で人気がなくなって売り込まれるようなことがあれば、ますます配当利回りは高くなる。
IPO株といえば、キャピタルゲインが欲しいところだが、短期に配当取りを狙う戦略も十分可能である。
但し、3月決算銘柄の権利落ち日である3月29日以降は速やかに売却してキャピタルロスが出ないようにしなければならない。そして、権利落ち日を越えての保有は1年後まで株価が戻ってこないことを覚悟することを忘れてはいけない。
IPO ジャパン編集長+IPOエバンジェリスト 西堀敬
【西堀敬プロフィール】
1960年、滋賀県生まれ。大阪市立大学商学部卒。日本ビジネスイノベーション代表取締役。事業会社で経理・財務の実務経験を積み、証券会社で国際金融業務、コンサルティング会社でIPOや上場企業の企業価値創造に携わりながら、日本のIPO市場、証券市場に関する情報をメディアで幅広く発信中。