「死んだ後のこと、今から話しておこうか」──高齢の両親に、そう切り出すことのハードルは思いの外高い。「縁起でもない……」「早く死ねって言うのか!?」そんな反応が返ってくるかもしれない。
「終活」や「断捨離」という言葉が広まっても、死後の準備にどこか後ろ向きな気持ちを抱く人は多い。だが遺される側に立ってみれば、いざ亡くなったときの負担は想像以上に大きい。
「自分が死ぬことが前提ですから、考えたくないと思うのは当然です。だからと言って、そのまま放置していてもいつかは“その時”がやってくる。そうなる前に、親族まで交えた『家族会議』をしておくことで、回避できる後々の面倒やトラブルは数多くあります」
そう話すのは、まこと法律事務所の代表弁護士・北村真一氏だ。「面倒」や「トラブル」の多くが“お金絡み”だ。遺族同士のトラブルと言えば「相続」である。
2015年に相続税の基礎控除額が引き下げられ、相続に悩まされる人は増えた。また、2017年の司法統計によると、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割紛争の実に75%が、遺産総額5000万円以下のもので、“うちはお金持ちじゃないから大丈夫”と思っている家族ほど、トラブルに発展している実態が浮かび上がる。
ただ、難しいのは、“相続について話し合う”ということ自体がタブー視されてきたことだ。その結果、“どんな財産があるのか”すら、共有できていない家族が圧倒的に多い。財産を把握することの重要性を税理士法人タックス・アイズ代表の五十嵐明彦氏は説く。