「預貯金の額、不動産や有価証券、貴重品の有無、果ては借金まで、死後に正確に把握することは難しい。あるはずのものがなかったり、ないはずのものが後になって出てきたりすると、深刻なトラブルにつながる。相続を“争続”にしないためには、何よりまず生前の家族会議で『財産目録』を作成しておくことです」
では、相続人が遺産分割協議をスムーズに行なう上で絶大な効果を発揮する、「財産目録」はどのように作ればよいのか。
「通帳レス」時代に「紙」で残す意味
「父が亡くなってから、普段利用していた銀行の通帳を確認したら、100万円ほどしか入っていなかったんです。貯蓄に熱心で、散財するような性格ではなかったから、おかしいなと。遺品には他の銀行の通帳はなかったので、片っ端から問い合わせをしたら、別の銀行に500万円ほど入った口座を持っていた。あのまま気付かなかったらと思うと……」(50代男性)
両親がどこの銀行に口座を持っているかすべてわかる、と自信を持って言える人は珍しいだろう。ペイオフ対策に、複数の口座に分散させているケースもある。
通帳が見つかればいいが、エコの観点から「通帳レス」のサービスをしている銀行も多い。手数料の優遇などもあり普及が進んでいるが、それが落とし穴にもなる。
「最近では、通帳もキャッシュカードもないネット銀行が見落とされているケースが増えている。財産目録作成の際には、〈貯金が○○円〉といった書き方ではなく、銀行名や支店名、通帳の保管場所なども一緒に記載した方がいいでしょう」(前出・五十嵐氏)
実家片づけ整理協会代表理事の渡部亜矢氏は「通帳を並べて写真を撮っておく手もある」と話す。前出・五十嵐氏はこう続ける。