世界中にドルをばら撒いてきたアメリカのQE3(量的緩和第3弾)が2015年1月から縮小されることが決定し、その後は金利が上昇するため、相対的に金の価格は弱含みになるとみられる。そこから金はどのような動きをみせるのか、金の動向に詳しい豊島逸夫氏が解説する。
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2014年の金は調整期に入るといえるが、別のいい方をすれば「足場固め」の時期となる。QE3縮小に伴って先進国は金利上昇で金売りを加速させるだろう。
ところが、金価格が1200ドル台から1100台に値下がりしようものなら、中国やインドの新興国勢が「待ってました」とばかりに大量の買いを入れてくるのは間違いない。ましてや新興国の買いは長期保有を前提とするため、しぶとい。米国の金利上昇などお構いなしに金買いに走るだろう。
そんなせめぎ合いの結果、どうなるか。答えは簡単だ。欧米のヘッジファンドが牽引した金の第1次上昇局面に取って代わり、新興国の買いが第2次上昇局面の主役となるのである。
もちろん先物やETF(上場投信)を駆使するような買いではないため、ジリジリと値を上げるイメージだろうが、控え目に見ても、東京五輪が開催される2020年までに金価格は2000ドルになっても不思議ではない。
何しろ金の生産が減少していくことが確実視されるなか、中国とインドを合わせて実に26億人もが買いに走るのだ。供給が減って需要が増えれば、上がらない方がおかしい。その時期は早ければ2015年にも訪れるかもしれない。2014年に限っていえば「弱気」だが、この先10年という長期では「超強気」というのが私の見方である。
さらにいえば、円建て金価格はもっと上昇してもおかしくない。ドル建てと円建ての金価格の比較チャートを見ると、アベノミクスがもたらした円安によって、相対的に円建て価格が上昇し、2013年1月には逆転したような格好だ。
しかも、日銀が異次元の金融緩和を続けるなか、米国の緩和縮小で日米の金利差が広がれば、ドル高円安傾向に拍車がかかる。その結果、ドル建て金価格が上昇したうえに、1ドル=120円まで円安が進んだとすれば、円建て金価格(1グラム当たり)は7700円まで上昇したとしても何ら不思議はないだろう。
われわれ日本人はそれほど有利な立場にいるということを改めて肝に銘じておきたい。
※マネーポスト2014年新春号