中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

採用担当者が出会った中で「最も優秀な学生」は何が凄かったのか

 しかし、先立つものがない。お金ですね。どうすればいいのかの解は「OBのカンパに頼る」しかないと判断しました。OB会の会長が某総合商社の会長だったので、その方に会い、僕らがなぜニュージーランド合宿をやる必要があり、そのためにカンパがいくら必要かを説明しに行きました。

 当然、その時の口説き文句は「先輩の皆さんも母校の後輩があの“花園”でプレーしているところを観たいですよね」です。

 すぐに会長は快諾してくれ、OB会にニュージーランド合宿のためのカンパを募る動きに出てくださり、僕達はニュージーランドに行くことができました。その実績を引っ提げ、花園に交渉したところ受け入れてくださり、カンパしてくださったOBの皆様を含めた方々に「花園での観戦」を実現できたのです。

 もちろん、現役生が一番このことを喜びましたが、カンパしてくれたOBの皆様も喜んでくれたと思う。そして相手チームも。この件を通じ、どうすれば一つの目標を達成する道筋を逆算できるか、といったことを学んだと思います。

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 以上、A君の言葉だが、彼の話を聞いた直後、私はすぐに「A君って『現実的な夢想家』だね」と言ってしまいました。あの頃の就活といえば、「私は納豆です、粘り強い人間です」などと自分から自分を表現する比喩を述べるのがブームになっていたが、A君については、面接官である私から「現実的な夢想家」という称号を与えるに至ったのです。なにしろ、どうすれば力を持った人間が動き、口説かなくてはいけない人間が首を縦に振るかを分かっている。これはビジネスマンとしては超絶優秀です。

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