「まず、原則として管理会社や仲介業者は『払わないと追い出すぞ』と家賃を取り立てることはできません。家賃が支払われない場合は賃貸人と賃借人、当人同士の『紛争』になります。弁護士法によって、当事者の間に立って紛争解決のために交渉できるのは基本的に弁護士だけと定められています。
実際の家賃の回収は本人や保証人、実家などに打診することになりますが、大家としては滞納するような住人には出ていってほしいと考えるでしょう。一般的には、3か月以上の滞納が退去の基準になりますが、先に申し上げたように裁判官は簡単には追い出しを認めません。住まいがなくなるというのは、それだけ大きなことだと見なされています」
月々の家賃を滞納するほど経済的に困窮している住人から、数か月分の家賃を徴収するのは至難の業だ。また、仮に家賃を徴収できたとしても、結果的に弁護士費用の方が高くつくケースも多い。そこで瀬戸弁護士は、相談に来た大家に対して「『すぐに出ていってくれるのなら、滞納分は免除します』と提案してみてください」とアドバイスを送るという。
「そのまま滞納され続けるくらいなら家賃を免除して自主的に退去してもらい、滞納のリスクのない人に貸したほうがいいケースがあります。大家からしてみれば不満が残る結果でしょうし、弁護士の収入にもなりませんが、大家にとっては結果的に得をする場合も多いと思います」
大家にとっては許しがたい家賃の滞納だが、場合によっては「損切り」する覚悟も必要なケースがありそうだ。
◆取材・文/曹宇鉉(HEW)